本研究は、金型表面を転写する成型法で超精密な非球面レプリカ光学素子を製作するための基盤技術を確立することを目的とするもので、これまでの超精密機械加工技術を集大成するものであり、最も仕様の厳しいX線望遠鏡用非球面レプリカX線反射鏡を対象とする。X線望遠鏡は、表面すれすれに入射したX線が円筒内面で全反射する現象を利用するもので、集光力・結像性能・重量の点から今後は高精度な非球面レプリカ反射鏡がX線望遠鏡の主流になり、これを実現するための加工技術の開発が必須となる。 そこで、超精密非球面加工装置並びに超高精度三次元形状計測器の高精度化、工具のノーズ半径の超精密計測法の確立、最適加工条件の導出、レプリカ作成時の形状転写性・表面微細構造転写性の解析、成型性・離型性の検討等を行って、非球面レプリカX線反射鏡基板を作成する。 本年度は、アルミニウム合金製非球面金型を1nmの位置決め分解能を有する超精密非球面加工装置で製作し、超高精度三次元形状計測器により形状精度を測定すると共に、アルミニウム合金に無電解ニッケルをめっき施し、これを超精密非球面加工装置でダイヤモンド平面切削し、表面粗さに及ぼす加工条件の影響を実験的に明らかにし、最適加工条件を見出した。その結果、表面粗さ0.272nm Raと言う世界で最も滑らかな切削面を得た。また、超精密平面切削面のレプリカを製作する基礎的な研究を実施した。超精密ダイヤモンド工具のノーズ半径を正確に測る計測システムを構築するため、カリフォルニア工科大学のS.F.Soares博士と超精密工具形状計測システムの設計・製作を行った。これは、光ファイバーと超安定レーザを使用する0.5nmの分解能を有する位置検出センサーを用いて、非接触でダイヤモンド工具先端の形状を計測するものである。
|