研究概要 |
本年度は,スパッタ薄膜を用いて接触部の検出を行なう方法の現出精度をより明確にするために,深さ25nmおよび70nmの2種類のV形溝をダイヤモンド圧子で引っかいて付けたガラス平面に滑らかな鋼球を押し付ける実験を行なった.また,その接触による溝部の変形をFEMによる計算機シミュレーションで併せて検討した.さらに数nmR_aの微小な粗さを鋼球試料表面につけた後にガラス平面に押し付けた場合の接触部の様子についてもSPMにより測定して検討した. 先ず,滑らかな鋼球および2種類の溝付きガラス平面の押し込み実験より,主に溝部の変形による接触部の検出と,FEMによる2次元解析により得られた結果は次の通りである.(1)実験的に求めた結果は,中心からの距離に対する,ヘルツの接触圧力と接触率はよく対応し,また最大接触率は,深さ70nmの溝の場合は約55%で,25nmの溝の場合は約85%であった.(2)二種類の大きさの溝に対するそれぞれのFEM解析から得られた接触率は,スパッタ薄膜による実験で検出した接触率とよく一致した.(3)このことから,今回用いているスパッタ薄膜による接触率の検出測定方法は,サブミクロン以下の寸法検出精度をもつことがわかった. 次に,粗い面のヘルツ接触実験により得られた主な結果は次のとおりである.(4)接触部を測定する場合の精度としては,水平方向で10〜30nmであると考えられる.(5)圧力分布は,従来ヘルツ接触の場合に比べて接触こんの中心がより低く外周に向かうにしたがってすそが広がるとされているが,今回得られた接触率の変化はこれと定性的に一致することがわかった. 現在,本方法の検出精度を向上させめため,スパッタ薄膜の組合わせを変化させて種々実験を繰返して,SPM測定の際に薄膜どうしあるいは母材と薄膜の材質の差が大きく現れるような組み合わせを検討中である.
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