研究概要 |
本年度は,引き続きスパッタ薄膜を用いて接触部の検出を行なう方法の現出精度をより明確にするために,粗い球面と滑らかな平面の組み合わせで実験を行ない,その接触部をSPMの各測定モードを用いて測定した. 実験は,粗い面として鋼球表面を約150nmRy,240nmRy(測定範囲20×20μm^2)に仕上げて,滑らかなガラス平面に,0.49N〜2.94Nの荷重で押し付けを行なった.接触部の測定は,前回の報告で有効であった測定モードのAFM, LM-FFM, DFMを用いて,ガラス平面に加えて鋼球表面側の測定も行い,薄膜の移着の様子を両面から比較検討した. 接触部の現出性について検討した結果は次のとおりである.(1)粗さのある接触では従来ヘルツ接触の場合に比べて中心における最大接触圧力は低く,外周に向かうにしたがって圧力分布のすそが広がるとされているが,今回得られた接触している部分の割合の変化がこれと定性的に一致することがわかった.(2)鋼球表面の測定においてLM-FFMにより接触部を検出することができた.また,ガラス表面側の接触部の様子と良く一致していることがわかった.しかし鋼球表面側の検出精度としてはやや低く,今後他のSPM法の使用も検討しつつさらに詳細な測定を進めていく必要がある. 以上のように,本研究ではマクロからミクロにわたる広範囲な尺度で接触の様子を解明するために,平面試料と球状試料を押し付ける実験を行なった.これによって,これまでの報告と併せて,本手法が横方向で数10nmの精度で接触部を検出できる可能性を確認できた.
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