研究概要 |
超格子構造を持つ固体潤滑膜の形成としてRFスパッタリング装置にグラファイトと軟質金属(Au,Ag)の扇状ターゲットを同時に設置し,基板回転およびシャッターの開閉により数原子〜数十原子層からなる(カーボンC/軟質金属(Au,Ag))nの多層膜を形成した。まず、グラファイトと軟質金属それぞれについて適切な薄膜形成条件を求めた。さらにそれぞれのスパッタ膜形成速度に着目し、膜形成条件の適正化を図った。すなわち原子間力顕微鏡を用い、膜形成速度を原子オーダで厳密に評価して,超格子膜の積層周期をnmオーダで制御した。また軟質金属同士である金と銀の超格子膜(Ag/Au)nを形成した。超格子膜のマイクロ変形特性評価として原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーション試験を行い,硬さ,弾性率が4nm周期で最大になる周期依存性を確認した。さらに摩擦抵抗の積層周期依存性を検討し、4nm周期で低摩擦を示すことを明らかにした。これらの検討結果を超格子固体潤滑膜の形成条件にフィードバックし,極低摩擦を実現できる固体潤滑膜の膜形成技術の開発を進めている。トライボロジー特性(摩擦特性,摩擦耐久性)の環境依存性評価として環境制御型トライボメータを用い、摩擦特性を高温環境下で評価し,超格子構造を持つ固体潤滑膜の温度依存性を明らかにした。さらに極低摩擦を実現する新しい固体潤滑膜として二硫化モリブデン系積層膜をスパッタリングにより形成し、ナノメータスケールの極薄膜形成条件の適正化を図るなど基礎的検討を進めた。
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