1.ナノ周期固体潤滑膜の開発;ナノ周期積層膜の硬さ増大メカニズムを明らかにし、新しい固体潤滑膜のモデルを提案した。具体的には、低せん断抵抗が期待できる材料をナノ周期で積層し、従来の単層膜や混合膜材料では得られなかった低摩擦を示す新しいナノ周期固体潤滑積層膜を開発した。(1)カーボン膜と窒化ホウ素膜ナノ周期固体潤滑積層膜;耐熱性向上が期待できる数nm周期の(C/BN)n積層膜を形成した。200℃の高温環境下による摩擦試験では、4nm周期の積層膜が最も低い摩擦係数を示すことを明らかにした。(2)銀・金膜のナノ周期導電性固体潤滑積層膜;導電性を示すナノ周期固体潤滑積層膜として、AgおよびAu膜を構成要素とする積層膜を形成した。積層により、摩擦係数は減少し、摩擦耐久性は著しく向上する。電気抵抗率評価では、単層膜の抵抗率が著しく増加するのに対し、摩擦後もほとんど変化せず、電気抵抗の安定性に優れた固体潤滑膜が得られている。(3)二硫化タングステン/二硫化モリブデンナノ周期固体潤滑積層膜;MoS_2およびWS_2の積層膜を取り上げた。その結果、大気中でμ=0.04の低摩擦が安定して得られている。更に、単層膜に比べ摩擦耐久性は6倍以上増大した。(4)ナノ加工実現;積層膜の欠陥の進展が層間で抑止される現象を活用し、層毎のナノ加工を実現した。 2.ナノコンポジット薄膜 三次元構造を有するナノコンポジットの基礎的検討として各種金属をカーポン膜中に分散させた金属添加DLC膜の形成とトライボロジー特性の評価を行った。ナノインデンテーションおよび原子間力顕微鏡(AFM)を用いたマイクロ摩耗試験で評価したところチタンを適切な量添加したDLC膜が優れた機械特性を示した。さらに金属添加により境界潤滑特性を改善できた。特にチタン添加DLC膜ではμ=0.04以下の低摩擦を示し、自動車の摺動部に応用し低摩擦を実現できる可能性がある。
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