狭い環状流路内沸騰二相流中に設置した流動障害物近傍の発熱管表面温度変動特性とその流動様相とを同時計測した。供試管の熱流束、質量速度、入口クオリテイがそれぞれ独立に急変する場合の過渡変動が流動障害物近傍の壁温変動に与える影響ならびに供試管上流側にエルボ部を有する場合における不安定流動の影響について詳細に調査した結果、次の結論を得た。 (1)熱流束急増および流量急減の過渡変化の場合、過渡変化の影響は小さく、変化後の条件が定常BTとほぼ同じ条件の場合にのみBTが発生する。また低流量の場合(j_L=0.1m/s)、BTの開始がスペーサ下部か内部にかかわらず発生するが、スペーサ下流ではBTは発生しない。 (2)熱流束急減による過渡変化ではその変動幅によってドライパッチがスペーサ内部およびその上流側にまで及び、温度上昇幅は20K〜30Kに及ぶ。 (3)供試管入口クオリテイを急増させる場合には安定に遷移するが、逆に急減させる場合には擾乱波の通過頻度が急減後に少なくなり、スペーサ近傍でBTが発生する。 (4)過渡変化により流動様相が変化しても、流速が速くなりせん断力が増す方向に変化する場合には比較的安定に遷移するが、反対に速度が低下する方向に変わる場合には、定常BT条件以下でもBTが発生することが有り、注意が必要である。 (5)本実験のように、供試管上流側にエルボ部を有する場合にはそのエルボ部のクオリテイX_<in>が0近傍の値であると、最大約40Kの大きな壁温上昇を伴う非定常性の強い不安定な流れになる。これは蒸気スラグがエルボ部で合体し、大気泡に成長し易いことによる。X_<in>、が大となって入口の流れが発達するか、流量が大となるとX_<in>≒0近傍でも流れの不安定はなくなり、壁温変動の振幅は小さくなる。 (6)本研究でのBT発生に対する共通の知見として、擾乱波の通過頻度(蒸気スラグ存在時間)がBT発生と密接に関係し、擾乱波の通過間隔が長くなるとBT発生に至ることが明らかになった。
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