研究概要 |
今日,軸流ポンプの高比速度化への要求は高い.しかし高流速化に伴うキャビテーション性能や効率の低下が避け難く,何らかの打開策を強く求められていた.そこで研究者らは,既に舶用プロペラ(スクリュー)等において実用になっている『二重反転式軸流ポンプ』の採用を考え,その利点を実験と理論の両面から調査検討し,その高性能設計法と高効率運転制御法を明らかにすることを目的として,本研究を開始した.本年度は,まず,翼車比速度を1500に置き,従来形である後置静翼形と二重反転形の供試ポンプを設計・試作し,両者の比核実験から,二重反転形ポンプの利点を調査した.その結果,(1)正規流量におけるポンプの効率を見ると二重反転形は低負荷形翼車となるため,前段動翼は従来形より良好な効率を示すが,後段動翼は効率低下が認められた.(2)部分流量域においては,二重反転形の作動原理上,流量-揚程の,従来形より強い右下がり変化を示し,より安定な運転となること,そのときの逆流発生は後置静翼形より低流量側で生じ,後段動翼での発生様相は静翼のそれとは全く異なること,さらにキャビテーションの初生は前段より後段翼車において生じることを明らかにした.ついで,二重反転形の採用により後段翼車の回転数制御を行うことが可能になる.そこで,これを調査してポンプ全体としての高効率化と高キャビテーション性能化への可能性があることが知られた.実験結果の更なる考察と後段翼車の高性能設計への指針を探るために,前段と後段翼車とを一体として解き,翼形状を的確に再現できる翼面特異点法を組込んだ準三次元非粘性流れ計算を開発し,後段翼車の低効率の原因とその改善策を検討した.それらの結果をもとに次年度に向けて設計・試作を終え,現在製作中である.
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