研究概要 |
本研究で用いる,FT-ICR質量分析装置の検出システムを改良し,反応生成物の検出可能な質量範囲を広げて,シリコンクラスター(15〜30量体)と一酸化窒素の化学反応性の研究を行った.その結果,一酸化窒素とシリコンクラスターの反応では,Si_n^++NO→Si_<n-1>N^++SiOのようなシリコン原子の引き抜き反応が起きることが確認された.また、シリコンの23,24量体を一つの境に反応後の解離の有無があり,それがある程度クラスターの内部構造の違いを示すものであるということが分かった.さらに,シリコンの6量体及び10量体が一酸化窒素との反応に対しても安定に存在することが分かった. 上記実験に加え,シリコンの結晶化過程を明らかにするために,固体中の結晶成長と初期結晶核の成長の様子を分子シミュレーションによって再現を検討した.[001],[111]それぞれの方向での結晶化過程を検討した結果,[111]方向では結晶成長は(111)面に沿ったLayer-by-Layerの成長機構が支配的であるのに対し,[001]方向では(111)facetによるV字のa/c遷移領域が頻繁に見られた.このことから結晶成長がどちらの方向でも,(111)a/c界面の存在が重要な役割を果たしていると考えられる.また初期結晶核からの成長を検討した結果,シード原子数が100を越えたあたりから結晶核は急激に成長した.この挙動は凝縮核生成の場合の時間履歴とよく似ており,原子拡散の障壁が高い固相中の結晶成長においても古典的核生成理論における臨界核の考え方が適用できることを示している.
|