研究概要 |
シリコンクラスター(Si_n)と一酸化窒素(NO)の化学反応性に関しては,昨年の場合よりもさらに広い範囲の実験を行い,Si_n^+ + NO → Si_<n-1>N^+ + SiOのシリコン原子の引き抜き反応と反応後クラスターの解離がレーザー照射による解離とほぼ同じパターンで起こることがはっきりした.さて,シリコンクラスターに関しては,構造異性体が存在することが知られており,化学反応に先立ってレーザーによるアニーリングを行うことが望ましい.そこで,Nd : YAGレーザー(4倍高調波)を準備し,クラスタービーム源からの飛行中でのクラスターのイオン化を試みているが,実験条件が安定せず,現在の所,成功していない.これに関しては来年度に成功させ,さらに,微弱なレーザー光によって加熱されたクラスターに対して,室温のアルゴンガスを衝突させて徐冷する事によってエネルギー的に最も安定なクラスターの幾何形状へとアニールする実験を試みる. 一方,シリコンの結晶化過程を明らかにするための分子動力学法シミュレーションでは,シリコン酸化物(アモルファス構造)の表面にCVDによって付着したアモルファス構造のシリコンが結晶化する過程を対象として,初期結晶核としてのシード原子数を様々に変化させたシミュレーションの結果を一般の核生成モデルなどと比較した.また,シランの反応容器内での熱流動と固体面での表面反応とをマルチスケール解析によって明らかにするために,分子軌道法によってシラン間のポテンシャルを求めるところからスタートして,分子動力学法によって衝突によるエネルギー授受を定め,DSMC法によって全体の解析を行うマルチスケール解析も行った.
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