固体面上の液膜を背面に設けた微小なヒータによりパルス状に加熱すると、マランゴニ効果により急速に流動が開始し、液膜は大きくくぼみ変形する。本研究の目的は、このような非定常マランゴニ現象の基本的な挙動を明らかにすることである。 本年度は、昨年度に引き続き、石英ガラス面に蒸着した大きさ1mmx40mm白金蒸着薄膜ヒータを、側壁の流動への影響が無視できるほどの大きさの容器の中央に設置し、その上に形成した油状の高沸点液体(セバシン酸ジブチル)をパルス加熱した際の、液膜の二次元変形・回復挙動に与える初期液膜厚さやヒータ発熱量などの影響を、レーザーフォーカス変位計を用いて調べた。実験にあたっては、容器の水平度、ヒータから壁面までの距離、壁面材料の濡れ性、初期液膜形状、初期液膜形状に埋設した電極・リード部、不純物による液膜汚染等の測定結果への影響がないことを注意深く確認して行った。 本年度の研究成果は以下の通りである。 1.矩形パルス発熱量の増加又は初期液膜厚さの減少とともに、より速やかに変形が開始し、ヒータ面上の液膜厚さの減少量並びに減少速度は増加すること、大きな発熱量では液膜は一時破断するようになること、発熱量と加熱時間の積すなわち加熱エネルギー量を一定にすると、変形量は発熱量や加熱時間によらずほぼ一定となる傾向があることなどを明らかにした。 2.ヒータ面上の液膜厚さの減少量は、流動を引き起こすマランゴニ力の代表値に対応すると考えられるヒータ直上の液膜部分の平均温度上昇(加熱エネルギー量から算出)によって統一的に整理することができることを示した。
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