研究概要 |
固体面上の液膜を、面に設けた微小なヒータにより背面からパルス状に加熱すると、マランゴニ効果により急速に流動が開始し、液膜が大きく変形する。この現象は学問的にも興味深いだけでなく、マイクロアクチュエータの新しい駆動原理となる可能性をもつなどの特徴を有している。本研究は、このような非定常マランゴニ現象の基本的な挙動を明らかにすることを目的として行った。 先ず、石英ガラス面上に高沸点液体(セバシン酸ジブチル)の厚さ最大100ミクロン程度の薄膜を形成し、石英ガラス面に蒸着した大きさ0.1mm×0.25mmの白金薄膜ヒータをパルス加熱した際の液膜の流動を実験的に調べ、比較的低加熱速度(発熱量0.1〜0.4W,加熱時間数ミリ秒程度)で、マランゴニ効果によると考えられるヒータ面からの液膜の急速な後退運動のほか、液膜表面からの急速蒸発と急速凝縮によるとみられる噴霧の発生などその特徴的な現象を明らかにした。 次に、設備備品費で購入したレーザーフォーカス変位計を用い、主に1mm×40mmの蒸着膜ヒータ上のパルス加熱における液膜厚さの時間変化や厚さの分布を調べた。容器の側壁、初期液膜形状、不純物による液膜汚染等の影響がないことを確かめて行った結果、液膜の急速くぼみ変形により排除された液の流入により側部が盛り上がるハ二次元的なM字型分布となること、液膜厚さの減少量や減少速度はパルス発熱量の増加又は初期液膜厚さの減少とともに増加して液膜が破断するようになること、ヒータ面上の液膜厚さの減少量は、流動を引き起こすマランゴニ力の代表値に対応すると考えられるヒータ直上の液膜部分の平均温度上昇によって統一的に整理することができることなどを示した。
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