食品工業において熱物性値の重要性が高まる中、特に食品の粘性率は工程の設計・制御・品質の評価に必要とされる。しかし食品の粘性は製造プロセス内で大きく変化する場合が多く、従来の計測技術ではその要求を満足できないのが現状である。 そこで本研究の目的は、食品の粘性率を非接触で高速に、かつ幅広い粘性率の変化に適用可能なレーザーを用いた光学的計測技術を、新たに測定原理から開発することである。 本年度の研究成果は以下のようにまとめられる。 (1)表面張力の温度依存性の影響を考慮した理論を新たに適用した。その理論が、特にトルエンをはじめとする低粘性試料から実験的に得られる信号波形を十分に記述できる事を明らかにした。 (2)レーザー誘起表面波の発生メカニズムにおいて、レーザーエネルギーの吸収による熱膨張と表面張力の温度依存性の2つの寄与が支配的である事を明らかにした。マイクロスケールでの温度勾配による表面張力差が起こす波の物理的イメージを、本研究で初めて明確にした。 (3)3次元的な光学系を設計するために新たに垂直定盤を導入した。この事により干渉縞間隔を容易に変更する事が可能となった。様々な実験条件で測定を行なった結果、実験的に得られた信号波形からフィッティング式を推測する事で粘性率、表面張力を概算した。 (4)透過光の1次回折光を同時に検知する事により、粘性率、表面張力だけでなく温度伝導率の同時測定の可能性を示した。
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