研究概要 |
本年度は微小ピエゾ振動子を利用し,微細な細胞の環境ストレスを検知し得る無侵襲プローブセンサーシステムの開発と高精度化のための改良を行った.またこれを用いた動物細胞の環境ストレス検出実験および評価システム構築のために,以下の手順で研究を遂行し,総括した. 第一に細胞及び微小生体組織の小ささとやわらかさに対応できるシンプルかつ小型の無侵襲型センサーを開発した.第二に顕微鏡下でそれらの細胞,生体組織の固定・移動等の操作が可能な実験装置のシステムを構築した.このセンサーシステムを用いた環境生物学への応用として,メダカの卵細胞のグルホシネートに対するストレス反応をやわらかさの変化として検出し,その影響を調査した.第三に,再生医工学への応用として,骨膜片を付加させたウサギの再生軟骨と,従来の再生軟骨との硬さの違いを培養期間によって比較して,移植性評価法としての有用性を検証した.本研究の結果を要約すると以下のようになる. 1)温度,濃度,圧力,pH,環境ホルモンなど種々の環境ストレスに対し,細胞が固有の力学的応答を示すことが明らかになった.また本計測システムによりこれらの力学的制御因子を定量的に評価可能であることが確認された. 2)環境ホルモンによるストレスは10ppm程度の低容量の場合でも,卵細胞に力学的な変化を誘起させることが明らかになった. 3)再生医工学への応用として,骨膜片を付加したウサギの再生軟骨の培養過程における硬化の度合いを培養期間ごとに計測した.さらに,この力学的な計測結果と生化学的,組織学的な計測結果とを比較し,移植性評価法としての有用性を確認できた.
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