研究概要 |
本年度の研究実績は最終年度として,MR効果のメカニズムに関する検討,2種類の可変減衰器の試作,および可変減衰器を用いた構造物の制振実験の3点をまとめた.MR効果のメカニズムに関しては,セルオートマトンと呼ばれる離散的モデル化手法を用いて,MR流体中に分散している強磁性体粒子のクラスタ形成に関するシミュレーションを行った.これによりMR流体の等価な透磁率を推定することに成功した.等価透磁率の算定により,MR流体を用いた機器の数値シミュレーションが可能となる.第2番目の実績としての可変減衰器の試作であるが,MR流体のせん断流れと圧力流れを利用した2種類の可変減衰器を試作して,その性能実験を行った.設計に際しては効率的な磁気回路を構成するために,反磁性材料を組み合わせて磁気の漏れを極力抑えるような工夫を施してある.その結果,いずれの形式でもMR流体の特性を最大限に活用した可変減衰器の設計指針を与えることができた.第3番目の実績として,MR流体を用いた可変減衰器とニューラルネットワークを利用した知的制御系を組み合わせることにより、模型構造物に関する実験的検討を行った.その結果,単一のMR流体を用いた可変減衰器により,時々刻々構造物と可変減衰器の特性を同定することで,構造物の振動を低減できることが示された.
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