研究概要 |
機器の可動部のうち,高速かっ高精度で運動する部分の性能の向上を目指す上で,他の可動部からの振動伝達を構造的に抑制する必要がある.一方,生産コストや運搬コストの削減のために機器の軽量化という要求もなされる.ところで,構造物の軽量化は振動抑制特性の悪化を伴う.それゆえ,振動を抑制しながら,機器の軽量化も図るという相反する要求を満たす構造設計が高性能な製品を開発するための重要な課題である. このような観点から,本研究では,構造部材の断面積や厚さを設計変数として,総質量に上限制約を設けた上での振動伝達の最小化や,振動伝達の許容上限を設けた上での総質量の最小化,または振動伝達と総質量の多目的最小化等の問題を考える.振動伝達の評価量としては,制御理論で使われるH∞ノルムを用いる.H∞ノルムは振動伝達の周波数特性のなかの最悪値を表し,不確かなまたは広帯域の振動源が存在する場合に特に有効な評価量である. 平成13年度は,総質量に上限制約を設けた上でのH∞ノルム最小化問題を考え,適応トラス構造物,平板構造物,骨組み構造物などを対象に最適設計法の開発を行った.最適化法としては,遺伝的アルゴリズムやシミュレーティッド・アニーリング法などの組み合わせ最適化法,数値計算による感度解析に基づく拘束付き勾配法、2次計画法などを適用した.いずれにおいても対象構造物の次元が高くなると,H∞ノルムの計算に時間を要するため,構造物のモード特性に注目した低次元化法を開発し、適用した.以上の研究により,各最適化法の特徴について有益な知識が得られた. また,骨組み構造物の模型を制作し,実験によって,設計計算通りの振動伝達抑制が実現できることを確かめた.
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