研究概要 |
今年度は,大型宇宙構造物のプロトタイプモデルとして空気圧浮上型のベースと2リンクのアームから成る柔軟構造物を作成した.同時に柔軟構造物の振動制御を実験的に検証するための3軸駆動型フレキシブル振動実験装置を試作した.フレキシブルモデルの大型宇宙構造物のモデル化を行い,剛体モデルに対して設計した制御則を適用する数値シミュレーションを行った.シミュレーションはフレキシブルモデルを第1振動モードで近似した場合には,剛体系に対して設計した制御則でも十分に有効であることが示された.ただし,振動の抑制は十分ではなく,今後,さらに高次の振動モードを考慮した安定性の評価を行う必要がある. 宇宙構造物を力学的に表現すると非ホロノミック系として表現できる.今年度は平面宇宙ロボットなどchained formへと変換できる力学系に対して適用できる新たな軌道追従制御系設計法の開発を行った.この手法は状態すべての情報をエラーシステムの変数として用いるため,初期値に依存しない追従特性をもち,4状態以上,3入力以上の多入力多変数非ホロノミック系の軌道制御を実現することができる. 一方,3軸駆動型フレキシブル振動実験装置を用いた非定常最適制御理論およびゲインスケジューリングによる制御実験においては,スケジューリングの効果が顕著に表れる実験結果を得た.非定常最適制御則は時変重みによりフィードバックゲインを時変にすることにより,制御効率を改善する制御手法である.この時変ゲインにさらにゲインスケジューリングを付加することにより,制御対象のパラメータ変動に対応できるロバスト性を有する制御系を構成することができる.実験では,共振周波数が変動するよう実験装置を調整し,その変動をスケジューリングパラメータによって推定し,共振周波数の変動に応じてゲインを変化させた.実験結果を従来法と比較し,提案法の優位性を実証した.
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