研究概要 |
今年度は,昨年度製作した空気圧浮上型大型宇宙構造物と3軸駆動型フレキシブル振動実験装置を用いた実験を行った.宇宙構造物の実験に際しては,実験前にアームの振動を引き起こさないよう,制御則の設計パラメータを調整する必要があった.実装する制御則は,Caplygin systemの特徴を利用したものであり,速度入力を用いて簡単に実装することが可能であるが,アームの周期運動を利用するため,アームの振動モードを励起する可能性がある.そこで,柔軟アームを有する宇宙ロボットのモデル化を行い,設計パラメータを変化させて,最適な設計パラメータを求めた. ステップ入力によるフィードフォワード制御による予備実験を行い,実験精度を確認した.その結果,ベース姿勢が0.4radほどの範囲では,ほぼ角運動量保存則を満たす運動を実現できることが確認できた.そこで,ベースの初期姿勢を0.2radにとり,原点の安定化を実現した.設計パラメータの調整により振動の発生も抑制でき,滑らかな安定化を達成した. 一方,今年度は,振動実験装置を改良し,粗動および微動アクチュエータを装備した2段アクチュエータ系の振動実験装置を試作した.このシステムに対する制御系設計法の提案を行い,実験を行った.具体的には,「非定常最適レギュレータ」を適用し,従来のサーボ制御とは異なる効果的な位置決めおよび振動制御が可能となることを示した.また,従来の振動実験装置を用いた実験では,オフラインシミュレーションに基づく高度な目標軌道設計と簡単なフィードバック制御器との組み合わせによる制御実験を行った.具体的には,非定常最適レギュレータによる制振性に優れた目標軌道設計とロバスト性に優れたスライディングモード制御によるフィードバックから成る2自由度制御系を構成した.数値計算および実験により,提案する制御系の有効性を実証した.
|