研究概要 |
本研究では,推進力を持たない宇宙空間に浮遊する大型宇宙構造物(Large Space Structures : LSS)の位置姿勢および振動(Position, Attitude and Vibration : PAV)制御に関する問題点を解決する制御系設計法を検討した.具体的には,宇宙空間に浮遊するLSSを非ホロノミック力学系と考えてモデル化を行い,柔軟構造物としてのLSSの振動抑制問題を考察した.制御系設計法として,周期を時間関数とする制御手法を提案した.これは,多次元システムに対応する制御入力であるが,無限次元システムに対する制御手法としても十分な有効性を持つことを実験によって示した.これにより,無限次元システム理論の制御手法としても新規性の高い新しい多元制御則によるLSSハイブリッドPAV制御系設計法を確立した. 研究期間内において得られた具体的な成果を以下に記す. (1)空気圧浮上LSS実験システムの設計・製作とシミュレーション 平成12年度は,大型宇宙構造物のプロトタイプモデルとして空気圧浮上型のベースと2リンクのアームから成る柔軟構造物を作成した.フレキシブルモデルの大型宇宙構造物のモデル化を行い,剛体モデルに対して設計した制御則を適用する数値シミュレーションを行った.シミュレーションはフレキシブルモデルを第1振動モードで近似した場合には,剛体系に対して設計した制御則でも十分に有効であることが示された. (2)非ホロノミックLSSのハイブリッドPAV制御系設計法の開発と実験 柔軟リンクから成る2リンク平面宇宙ロボットの姿勢制御問題を検討した.このようなシステムはCaplyginシステムと呼ばれる非ホロノミックシステムであることが知られている.本研究では,滑らかで微分可能な時変フィードバック制御による安定化手法を開発し,数値シミュレーションによる制御効果の確認を行った.さらに,空気圧浮上型の平面宇宙ロボットを製作し,提案手法による制御実験を行った.柔軟リンクの振動モードを励起しないよう,詳細なシミュレーションを行い,制御則を設計した.柔軟リンク宇宙ロボットの姿勢安定化を実験により達成した.実験結果は,数値シミュレーションとほぼ同様な応答結果を示し,制御則の有効性を実証できた.
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