研究概要 |
本研究は,植物細胞や動物細胞に対して,人為的な操作を行う時に使用する細胞操作用マイクロマニピュレータの開発に関する研究である.細胞を一個ずつ正確にハンドリングし,個々の細胞に対して,あらゆる位置,角度から細胞内へDNAや核のインジェクション作業を正確にかつ迅速に行えるマイクロマニピュレータの開発を目的とした.研究期間内で下記の研究を行った. (1)核移植用マイクロピペット駆動装置:核移植用マイクロピペットを卵細胞に挿入する際,細胞膜の弾性がマイクロピペット挿入の妨げになり,作業効率低下になっている.そこで,圧電インパクト駆動機構と電磁衝撃力を用いた駆動機構(電磁インパクト駆動機構)を組み合わせたスーパーインパクト駆動機構を発案し試作した.マウス卵細胞を用いた実験では,細胞質にダメージを与えることなくピペットを挿入することができた.電磁インパクト駆動機構は,細胞膜の固いブタ卵細胞などで,そのインパク力によりピペット先端部を鋭利に加工せず細胞へのスムースな挿入を可能にした. (2)動物卵細胞ハンドリング機構:卵細胞からの脱核作業において,前核の位置がホールディングピペット寄りにあると,複雑な作業を繰り返し,前核の位置を修正しなければならない.そこで,静電力を利用して細胞回転機構を試作した.印可電圧4V,500kHzにおいて卵細胞は回転速度約30deg/sの回転を生じた.電極板を複数枚積層し3次元化して,360度自由な姿勢での位置決めを可能とする実験装置を試作した. (3)液流を用いた細胞整列機構:ボイスコイルモータを用いたXY2軸の実験装置を試作した.加振周波数,加振振幅,液量などをパラメータとして種々の実験を行った結果,液流に点在する細胞を任意に集合させることができた. (4)下記研究機関へ装置を貸し出して実験を行った. 鹿児島大学,帯広畜産大学,東京農業大学,弘前大学,セントマザー産婦人科医院.
|