研究概要 |
1.車の運転にかかわる高齢者の認知機能と運動機能を計測するためのドライブシミュレータの開発を行った.シミュレータは実車のコクピットと,バーチャルリアリティ技術を利用した道路環境呈示装置と,生体情報計測装置から成り立つ.道路環境呈示装置により交通事故が起こり易い状況を画像として呈示し,生体情報計測装置を用いて運転中のドライバの注視点,脈拍,脳波,筋電位等の生体情報を計測する.コクピット部により,ブレーキやアクセルの踏力,タイミングおよびステアリング角度等の物理量を計測する.本年度はこれらの装置の試作を行った.本装置を用いて,高齢者の運転挙動と事故との関連を今後検討予定である. 2.車内の情報化が進んでいるが,運転中のドライバーが安全に情報を得るためには状態監視技術と視覚特性を考慮した情報呈示方式の検討が必要である.状態監視技術としては,(1)居眠り・脇見運転検知のための基本技術を開発した.(2)携帯電話通話に伴う意識集中の検出方法の開発を行った.視覚特性を考慮した情報呈示方式は,(3)目の順応機能を考慮した車載ディスプレイの表示方法の開発を行った.(4)認知できる表示情報量の基礎検討を進めている.加齢による視覚機能低下とその支援方法については今後検討予定である. 3.単一の感覚に対して多感覚の認知では,それぞれの感覚に関連する脳活動が要求されるが,同時感覚入力の相互的な影響や,脳内での多感覚の同時処理機能について明らかにする.(1)事象関連電位(ERP)は,外的刺激に対する認知や注意力を反映するので,皮膚電気刺激による体性感覚刺激と聴覚刺激を独立または同時に加え,ERPに与える影響を調べた.ERP測定のための刺激条件としては,右手皮膚電気刺激,両耳聴覚刺激,右手皮膚電気刺激と両耳聴覚刺激,両手皮膚電気刺激の4つの条件で15秒間隔でランダムに繰り返し,脳の電気的活動を頭皮上電極から導出し,20〜30回加算平均を行った.(2)視覚的に思考問題を聴覚に位相差を刺激として同時に呈示したとき,視聴覚の反応時間特性を認知心理学実験を用いて測定した.さらに,視聴覚情報が同時に呈示されたとき,fMRIを用いて脳のどの部分でどの程度のレベルで認知されるか計測した.
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