研究概要 |
本研究では,規制緩和後における電力システムの信頼度低下に対し,経済性を損なわずに適切に対処することが可能な,分権型電力供給システムを提案し,技術的および経済的な観点からその実現可能性を明確にすることを目的としている。本年度は,特に下位系統における経済性,信頼性の評価に関して,配電システムにFRIENDSの概念における「電力改質センター」を導入することにより,信頼度をどの程度向上させることができるのか,すなわち,需要家が自前で非常用電源を導入することに勝るようなメリットが期待できるかどうかについて詳細な評価を行った。さらに,CO_2排出量制約や一次エネルギー消費量に関する制約をパラメータとして考慮し,分散電源と大規模集中電源とが適切に協調可能であるかどうかを評価するためのツールの作成も行った。 得られた知見をまとめると以下のようになる。 1.新規需要地区に,従来配電方式とFRIENDS方式それぞれの方式で,新たに配電系統を敷設する状況を想定し,これら2つの方式の同一コストの下での信頼度を比較した。その結果,上位系統の信頼度が低く,負荷密度が高い地域の場合,特に,FRIENDSにおける高品質電力の信頼度が,従来配電方式のそれと比べて高くなり,FRIENDS導入のメリットが大きいことが明らかになった。 2.大規模電源を主体とした電力供給方式において,トータルとしての環境目標が課せられた場合に,下位系統に分散電源を導入し,時間帯別電気料金制度下でその運用を制御することで,環境に優れた電力系統を構築できることを示した。 3.負荷率が低く,熱需要が大きい下位系統ほど,環境性から見た分散電源の導入価値が大きくなることが明らかになった。 4.需要家にCO_2排出量制約を与え,需要家が,その排出量制約を満たすように上位系統からの電力及び下位系統(分散電源)からの電力を自由に選ぶことができるように行動することによって,競争環境においても,CO_2排出量削減という観点から大規模電源と分散電源とが適切に協調可能であることが明らかになった。特に,分散電源が導入されることにより,需要家にとっては,トータルとして電気料金が低く抑えられ,CO_2排出原単位も減少させることができることが示された。
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