研究概要 |
本研究では,超伝導変圧器に限流機能を複合化させた「超伝導限流変圧器(Superconducting Fault Current Limiting Transformer : SFCLT)」を提案し,超高圧基幹送電システムの主変圧器として導入した場合を想定して,SFCLTの電力システム導入効果を計算機シミュレーションによって解析した.その結果,以下の知見が得られた. 1.電力システムの故障電流によってSFCLTの超伝導巻線を積極的に超伝導-常伝導遷移(クエンチ)させ,それによって発生する限流インピーダンスを利用して故障電流を抑制することにより,電力システムの過渡安定度の向上に寄与する. 2.SFCLTの限流インピーダンスは故障時にのみ発生するため,定常状態における変圧器としての漏れインピーダンスを低減することにより,電力システムの定態安定度の向上にも寄与する. 3.SFCLTの漏れインピーダンス(%Z)と限流インピーダンス(Rsc,τ)との組み合わせを最適化することにより,故障電流抑制効果と過渡安定度向上効果とを両立することができる. 4.発電機相差角動揺,故障電流,限流動作時におけるSFCLTの過電圧特性および熱的特性を総合的に評価した結果,%Z=10%,Rsc=150Ω,τ=5msの場合において,55%の過渡安定度向上効果および30%の故障電流抑制効果が期待される. 5.SFCLTの超伝導復帰時間の影響について調査した結果,故障回線の再閉路前後での超伝導復帰を回避し,発電機相差角動揺の減速領域で超伝導復帰すれば,SFCLTの機能を有効に発揮することができる. また,SFCLTの小型モデルを設計・製作し,機器単体としての通電・クエンチ試験を行った.その結果,以下の知見が得られた. 6.SFCLTの単相モデル(定格電圧:72/40V,定格容量:2.08kVA)の設計・製作・通電試験を行った結果,漏れインピーダンス:%Z=12.8%,クエンチ電流値:Iq=222A,限流インピーダンス:Rsc=4.5Ω,τ=3.5msが得られ,設計仕様をほぼ満足することができた. 7.SFCLTの3相モデル(定格電圧:275/105V,定格容量:6.25kVA)を設計し,次年度において電力システム導入効果を評価するための試験計画を立案した.
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