研究概要 |
本研究では,超伝導電力機器の新しい機能創製を目指して,超伝導変圧器に限流機能を複合化させた「超伝導限流変圧器」(Superconducting Fault Current Limiting Transformer:SFCLT)を提案し,検討を行った.その結果,以下の知見が得られた. (1)SFCLTの電力システムへの導入シミュレーション 本研究では,超高圧基幹送電システムを模擬した1機無限大母線モデル系統において,500kV/275kV変電所の主変圧器としてSFCLTを導入することを想定した.275kV送電線の1回線3相地絡故障と一連の遮断器開閉動作シーケンスを設定し,SFCLTの漏れインピーダンス(%Z)および限流インピーダンス(到達抵抗値:R_<sc>, 時定数:τ)をパラメータとして,発電機の相差角動揺,故障電流,過電圧および熱的特性について検討した. (2)SFCLTのモデル器製作・システム導入動作試験 SFCLT動作パラメータの最適化を行ったシミュレーション結果に基づいて,275V/105V,6.25kVAの3相SFCLTモデル器を設計・製作を行った.また,この3相SFCLTを275kV実送電線を想定した,1/1000スケール模擬送電線に適用し故障電流抑制効果と過渡安定度向上効果との両立の可能性について実験的に検証を行った.その結果,SFCLTの単体試験から,供試3相SFCLTは超伝導変圧器および超伝導限流器としての設計仕様を満たしておりSFCLTの基礎的な特性・機能を有していることを明らかにした.また,模擬送電線を用いての実証試験から,3相SFCLTは正常に機能しており,定常状態においては変圧器として機能し,故障発生時には超伝導限流器の機能が付加されることを明らかにした.以上の各試験結果とシミュレーションとがよく一致し,SFCLTを電力システムに導入することにより,変圧器の漏れインピーダンスの低減が可能となり,電力システムの過渡安定度向上および故障電流抑制の両立が可能となることを実験的に明らかにした.
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