研究概要 |
本研究では,輸送用,わが国では特に新都市交通・地下鉄電車用に利用されているリニア誘導モータの性能を大きく向上させることを目的として,新原理に基づいた端効果補償法について検討している。今年度は円筒形磁気車輪方式の端効果補償装置に関する基礎データを解析的に把握することを目標とし,次のような知見を得た。 1.本補償法の効果をリニア誘導モータの等価二次インピーダンスの変化として観察することができた。このインピーダンスを横軸を等価二次抵抗,縦軸を等価二次リアクタンスとするグラフで表示すると,端効果を生じるリニア誘導モータの二次インピーダンス点を中心に,ある半径の円周上でインピーダンスを変化させる作用があることが判明した。この円周上の点と端効果がない場合のインピーダンス点が一致すると,本端効果補償装置で端効果を完全に補償できる。また,横軸の二次抵抗が最大になる点では,推力を最大にする動作点になる。この円周上の点は補償器とリニアモータが作る磁束密度の初期位相差によって変化し,半径の大きさは補償能力を表すことが明らかになった。この補償能力は以下に述べるパラメータなどで変化する。 2.端効果補償磁束密度の大きさは回転方向の永久磁石起磁力分布の基本波成分の大きさにほぼ比例する。 3.永久磁石の磁化方向の厚さに関しては,補償磁束密度を0.5T以上に設定すると急激に厚いものが必要になる。 4.補償装置の極数としては,供給磁束密度の大きさの観点から極数が多いことが望ましい。一方,補償器駆動電力の面からはポールピッチはリニア誘導モータのポールピッチと同等であることが好ましいことが明らかになった。すなわち,これらを同時に満足するには補償器外径が大きなものとなるために,適切な極数としては4極または2極と考えられる。
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