研究概要 |
本研究では,最近,新都市交通・地下鉄電車等の駆動用として利用されているリニア誘導モータ(LIM)を高性能化するために,根本的対策である端効果補償法について新方式を提案し検討している。本年度は以下の具体的な2種の補償方式について解析的に検討し,次のような新たな知見を得た。 1.円筒形磁気車輪回転方式 (1)磁気車輪に強力な永久磁石を利用することで,わが国で利用されているリニア地下鉄仕様のリニア誘導モータの端効果を補償することが可能である。 (2)起磁力を調整できない永久磁石方式でも滑りや速度変化時の特性において,補償の程度が過不足になるだけであり,特性曲線として不具合を生じることはない。 (3)補償の度合いは低滑りほど大きく,またLIM一次電流が小さい時ほど大きく,LIMとして高性能が得られる動作点での効果が大きい。 (4)磁気車輪の径またはポールピッチによって磁気車輪部分の推力や駆動トルクは正負に変化し,回転駆動トルクの必要ない磁気車輪径が存在する。 (5)今回の検討モデルでは,磁気車輪下で生じる二次側渦電流はLIM部分に十分伝達されているとは言い難く,無駄な損失が観測された。今後,磁気回路構造について検討する予定である。 なお,本年度設備備品費で永久磁石回転型補償試験装置を製作した。これにより今後,本方式の実験的研究が可能になった。 2.静止型単相集中巻線方式 (1)磁気車輪回転方式と比べ静止型は総合的に低力率であり,また巻線内での銅損による相互効率の低下は免れないが,補償原理の観測や総合的な効果の検討に利用できる。 (2)1巻線型では補償器自体の端効果を受けて負推力を発生し易く,通常の方法ではLIMを含む総合特性の向上は期待できず,磁気回路等の検討でその有用性を見極める予定である。 (3)2巻線法では補償器部分の推力は巻線間隔によって正負に変化することが明らかになり,パラメータの関係や電磁現象をさらに解明する必要が出てきた。
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