研究概要 |
本研究は,最近大都市の新しい地下鉄で普及しつつあるリニアモータ駆動電車において重要な課題となっている電力消費量の低減化を目的とし,その根本的対策である端効果補償法について検討を行ったもので,以下のような成果を得た。 研究代表者が提案した「一次鉄心領域での電流分布や磁束分布を考慮することなく,リニア誘導モータ主巻線の入口端前方でリニアモータ電流と同期した二次電流を供給するだけで端効果の補償が行える」という新しい概念に基づき,具体的な以下の2種の方式について検討した。 1.永久磁石回転型補償器 (1)補償器のみに関しての実験により,本方式でリニアモータ部に端効果補償用の二次電流を流入させることができることを実証した。 (2)本方式での設計には,リニアモータ部に進入する渦電流と共に,永久磁石-二次裏張り鉄-一次鉄心の磁路による磁束の影響を考慮する必要があることを明らかにした。 2.静止巻線方式・2コイル型補償器 (1)本モデルのような単相電流コイルを用いる静止型では,補償器部分において制動力が発生するが,補償器の磁極ピッチ等を適切に設計することで,リニアモータの定格推力・約12kNに対して,0.5kN以下の小さな制動力に抑えることが可能であることを明らかにした。 (2)リニアモータと補償器の双方を考慮できる総合特性解析法を開発した。その解析によると,端効果を完全に補償するのではなく,補償器部での損失が少ない状態でリニアモータ特性を補償することで,端効果がない場合の効率よりも高くできるという結果を得た。具体的数値例として,静止型である2コイル型端効果補償器方式により現在の効率を5%強増加させ,80%強の効率が得られた。 この結果はこれまでには全く考えられなかったことであり,今後更にその現象を分析・解明し高効率化のメカニズムを把握する必要がある。
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