研究課題
基盤研究(B)
ケーブルインコンジット導体のような、導体内の電流分布及び素線間の接触抵抗が制御できない超伝導導体では、長時定数の結合電流による付加的な交流損失の増大など、設計時には想定していない現象が発生し、導体及びコイル性能の定量的な把握を困難にしている。このことは導体内の電流分布が制御できていないためであり、導体内の電流分布を制御した導体の開発研究を行った。各素線の位置及び軌道がはっきりした成型撚線は、導体内の電流分布を制御することが容易であり、また超伝導導体内の電位分布を最適化することにより、交流損失と安定性を両立させた導体の設計が可能である。最初に、素線のツイストピッチを長くすることにより、交流磁場による素線内の起電力と撚線の起電力をキャンセルし、トータルの交流損失を低減する導体を試作し、実際に交流損失を測定してその効果を実証した。しかし、成型撚線はその断面形状が矩形であることと補強材を含まないため、核融合実験装置等の大型超伝導コイルの導体とするためには、成型撚線を集合し機械的な補強等を施すことが必要である。また伝導冷却型コイルの場合には、パルス運転時のコイル温度上昇を抑えるために成形撚線以外の部分に比熱を持たせた高比熱の導体とする必要がある。成形撚線を集合して大型導体を構成する一例として、成型撚線を低純度アルミニウムと押し出し一体成形して円形の断面形状とする導体を試作した。この導体を成型撚線の幅広面に平行に磁場が加わるように導体を捻りながら巻線することにより、コイルとしての交流損失を大幅に低減できることを示した。これらの実験及び解析結果から、導体内の電流分布を制御し、低交流損失と高安定性を両立させた超伝導導体の設計手法を確立した。
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