研究概要 |
現在光を用いた空間並列多重通信とこれを用いた光インターコネクション,光並列情報処理が是非とも必要であるとの認識が高まり,その光源として面発光レーザとその集積化の研究が活発に進められている。しかしレーザの光出力は発振しきい値に敏感なため,大規模(>100)に集積化するにはレーザ特性の均一性が要求され,各レーザの光出力をそろえるという観点から集積度が増すにつれyield(良品率)に関する困難が増大する。この点,将来的には"しきい値の無いレーザ"ができれば理想的である。本研究では当該研究者らがフォトニック・ドットと呼ぶ3次元フォトニック量子構造を作製し,強い励起子フォトン結合に基づく顕著な自然放出の増大(Purcell効果)・抑制に関する検討を目指している。 昨年度GaAs基板上に作製したZnSピラミッドにおいて共振Q値が5000近くと大きな鋭い共振特性が得られた。これはピラミッド下部のGaAs基板が光吸収層であるにもかかわらず,大きな屈折率差によってこのような良好な特性が得られたと理解された。しかしこの方法では共振の得られる波長域が限られるために,任意の波長域で共振特性を実現できる分布反射ミラーとの組み合わせを検討した。さらに発光層としてのCdS量子ドット層を組み込み,共振モードによって強く変調された自然放出光の室温での観測に成功した。通常半導体からの発光波長はエネルギーギャップの温度変化に伴い比較的大きな変化を示し,その発光半値幅もキャリアの熱分布を反映して温度の上昇とともに広がってしまうが,この変調された自然放出光の発光波長ならびにその半値幅は非常に小さな温度依存性を示し,その特性が共振器によって決定されていることを確認した。
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