研究課題/領域番号 |
12450120
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊 裕之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90013226)
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研究分担者 |
野田 武司 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (90251462)
高橋 琢二 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (20222086)
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キーワード | グレイン(粒状)物質 / 量子ドット / アンチドット / 電子散乱 / 量子リング / 局在 / 電子緩和 / ナノ構造 |
研究概要 |
数ナノメートル(nm)から数百nm(サブミクロン)の寸法の粒状(グレイン)領域を持つ物質では、電子の局在による離散状態の形成(量子ドット効果)やグレインサイズに依存するプラズマ振動の発生、グレイン間の境界による電子の反射や散乱など様々な現象が起きる。本研究では、これらの現象の解明と制御を図るとともに、その応用可能性を探る。 本研究では、まず(1)引力ポテンシャルを持つInAsドットをGaAs-AlGaAs系のヘテロ接合伝導チャネルの近傍に配した構造で、2次元電子のドットによる散乱過程について理論的・実験的検討を進めた。その結果、電子とドット間の距離の大きな場合には、捕縛電荷によるクーロン散乱が支配的となるが、距離が小さな場合には、ドットそのものの近距離形の引力ポテンシャルによる散乱が支配的となることを見出した。また、(2)斥力ポテンシャルを持つGaAs中のInAlAsアイランドによる電子の散乱についても検討を加え、電子移動度の計測解析から、InAlAsの実効ポテンシャルの高さや相関長などが決定できることを示した。また(3)GaAs中のGaSbやAlGaSbアイランドによる電子や正孔の閉じ込めについても検討を加え、この構造が正孔に対しては引力的に作用するが、電子に対しては斥力として作用するため、電子と正孔の分離した特異な量子リング状態の形成できることなどを示した。さらに、(4)量子ドット内の励起準位から基底準位への緩和に関しては、電子とフォノンの結合したポーラロンが重要であることを明示するとともに、ドット周辺に自由キャリアが蓄積された場合には、面内電界の作用でキャリアをドットに接近させることにより、オージェ緩和過程を促進できることも指摘した。また(5)(111)B面より傾斜させたGaAs基板の表面に生じる準周期的なステップ構造を用いた量子細線やリッジ型量子細線構造において、形状の不均一性に伴って励起子が局在する作用などについても新知見を得た。
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