本年度は、反応性スパッタ法により作成した酸化タンタル薄膜及び、その上に液晶セルを形成した試料の光伝搬、変調特性を調査した。酸化タンタルの膜厚は今回伝搬光に使用したHe-Neレーザー波長とほぼ同じ600nmとした。まず、酸化タンタル薄膜のマルチチャネル分光測定器を用いて光反射・吸収スペクトルの干渉光から膜厚、屈折率及び、減衰定数を決定したところ、酸化タンタルは可視光全般において極めて高い透過性を有する均一な薄膜形成が可能であることが分かった。次いで、酸化タンタル及び液晶セル付き酸化タンタルの光伝搬特性を調べたところ、酸化タンタル光導波路の伝搬定数は0.4dB/cm程度と優れており、液晶セルを付けた試料においても十分な光伝搬性を示すことが明らかとなった。また、液晶セルに電圧を加えると液晶分子配向に伴う容量変化と同時に伝搬光の変化も観測できた。液晶の配向を助けるポリイミド薄膜の電気絶縁特性の調査から、高電界印加が可能であることが分かった。なお、現状では伝搬光変化率(消光率)は極めて低いが酸化タンタルと液晶セルを結合した試料において光変調可能であることを見出した点は意義深いと考えられる。今後、さらなる変調特性の改善と素子の制御性の改善及および来年度購入予定のインピーダンスアナライザ-による詳細な検討が望まれる。 なお、本年度当初予定としてはアルゴンレーザーを用いた金属タンタルの熱酸化条件の検討を行なう予定であったが、レーザーの納入が大幅に遅れたため酸化条件の検討までに至ることは出来なかった。しかしながら、平成13年度予定の一部である光変調素子のプロトタイプの作成にはすでに大まかな見込みができたことから、今後、素子特性改善と並行して検討していくことで今年度の遅れ分についての問題はそれほどないと考えられる。
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