本年度は、屈折率が大きく損失が小さい酸化タンタル薄膜光導波路の形成法やレーザ照射による高分子薄膜及び酸化タンタル光導波路層のパターン制御について検討を行った。 まず、レーザ照射により光導波路パターンを形成するためにXYステージによりレーザ光の照射位置をμmオーダーで制御するための制御系を構築し、Arレーザを色素添加した高分子に照射する実験を行った。色素添加した高分子にArレーザを照射すると色素の光分解反応により照射部分が透明になる。そこで、照射部分の光吸収スペクトルや光伝送特性を調べたところ、一旦レーザ照射して透明化した部分の透過率は色素添加していない元来の高分子よりも透過率が大きく、可視光領域での光の伝送特性も優れていることがわかった。なお、色素添加した高分子は熱処理等によっても透明化可能であるが熱処理により透明化した薄膜の透明度は元来の高分子の透明度に戻るだけであり、レーザ処理が特に光伝送特性改善に有効である。 次に、金属タンタル薄膜をスパッタ法により形成して、同様のレーザ処理によりレーザ処理部の酸化タンタル化を試みたところ室温での酸化タンタル形成は無効であるが、基板を300℃から400℃に加熱しながらレーザ照射を行うことである程度選択的に酸化できることがわかった。ただし、基板加熱の際には試料全体が酸化される傾向があるためさらなる詳細な条件の検討が必要である。 また、酸化タンタル層上にネマティック液晶セルを形成し、試料に電圧印加を行ったところ、外部電圧によって液晶配向が変化すると同時に酸化タンタルを伝搬する光強度が変化することがわかった。さらに、パルス電圧印加時の過渡応答から電圧極性変化直後数μ秒の短時間で光強度が変化しうることもわかったが、変化の機構や詳細については次年度での更なる検討が必要である。
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