本研究では、連結量子ドット構造の基礎研究として、単結晶のSiシートで連結された高密度単結晶Siドット(2次元連結Siドット)構造を作製し、その電気伝導機構を解明することを目的とし、研究を進めてきた。 連結型Siドットは、SOI (silicon-on-insulator : SiO_2上に薄い単結晶Si層が形成されている)基板の表面へ、平均10nmオーダーの極微小SiN核を自然形成し、それをマスクとしてSi層を選択酸化する、という独自の方法により実現した。SiN核は、0.5nm程度の原子的厚さしかないが、熱酸化のマスクとしてはたらく。ドットのサイズや平均距離はSiN核の形成条件により制御でき、ドット間の電気的結合の強さは、Siシートの膜厚(選択酸化の量)により制御できる。ドット間のSiシートが十分に薄いと、量子力学的サイズ効果により、この部分の電子準位の量子化が生じ、トンネル障壁としてはたらくことが期待される。 このようにして作製した2次元連結Siドットを、0.2μm幅程度の細線に加工し、さらに細線上にA1電極を0.8μmの距離に対向配置した連結SiドットFET構造を作製するとともに、低温(15K)における電流-電圧(I-V)測定を行った。I-V測定において、単電子トンネルの最も直接的な証拠であるクーロン振動を観測することができた。I-V特性の解釈を進めるとともに、走査プローブ顕微鏡の一種であるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を用いて、電子輸送経路の時間的・空間的変化の検出を試みているところである。
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