研究概要 |
反強磁性/強磁性2層膜の及び強磁性/反強磁性/強磁性3層膜の交換結合について検討するとともに,微小な領域の交換異方性を調べるために集束イオンビームによる磁性薄膜の微細加工,および走査型磁気力顕微鏡による磁区パターンの観察を行ない,下記の結果を得た。 (1)Gaイオンソースの集束イオンビーム加工装置を用いて,NiFe薄膜を1×1μm2から0.2×0.2μm2の正方形の磁性ドットに加工して,その磁区パターンを走査型磁気力顕微鏡により観察したところ,1×1μm2のサンプルでは,典型的な還流磁区パターンが見られた。しかし,0.2×0.2μm2では,磁区は確認できず,単磁区になっているものと考えられる。 (2)NiFe/MnIr2層膜を単結晶MgO(001)基板上に作製し,その結晶構造と交換異方性について調べた。NiFe層,MnIr層ともに(001)面がエピ成長した。成膜中に結晶の[100]および[110]方向に静磁界を加えながら成長させた2種類の試料を作製したが,両者ともに交換異方性の容易方向は[110]方向となった。これは,反強磁性MnIrのスピン構造が,3Qと呼ばれる配列を取っていることに対応している。 (3)NiFe/MnPt交換結合膜をMBE成膜し,その構造と交換異方性について調べた。MnとPtの組成が1:1でMgO(001)基板上に成長させた場合には,室温成長においても膜面内に規則配列が見られた。膜面内のトルク曲線には,4回対称の大きな磁気異方性が観測されたことから,膜面内の結晶構造を膜面小角入射のX線回折で逆格子マッピングを行ったところ,正方対称の構造であることが分かった。これより,バルクとは異なった規則配列をもつ非平衡の合金がMBEによって生成されたことが明らかになった。
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