研究概要 |
本年度の研究計画に基づき,様々な手法を用いて各種電極上における強誘電体Pb(Zr,Ti)O_3(PZT)薄膜のグレインサイズの制御を試みるとともに,グレインサイズ及びグレインバウンダリがメモリ特性に及ぼす影響について調べた。以下に得られた知見を要約する。 1.PZT薄膜の作製パラメータと下部電極(Pt,Ir)のグレインサイズ制御により,PZT薄膜のグレインサイズを120から240nmまで制御できた。また,膜厚の変化(60〜400nm)に伴い,グレインサイズは100から400nmまで変化した。 2.二段階成長法において結晶核として用いるPbTiO_3の初期成長過程を詳細に調べた。その結果,Pt(111)下部電極上では,(111)面に配向した三角形のPbTiO_3初期核が形成され,その大きさや密度は成長時間や成長温度,下部電極のグレインサイズによって制御できることがわかった。これら100nm以下のナノサイズPbTiO_3結晶核は,正方晶の結晶構造をとり,強誘電性を有していた。 3.PbTiO_3結晶核を用いた二段階成長法において,結晶核密度の制御によりPZT薄膜のグレインサイズを150から200nmまで制御できた。また,得られたPZT薄膜は400℃という低温で作製したにもかかわらず,ペロブスカイト単相であり,強誘電性を有していた。 4.SPMによる分極反転のナノレベル観察により,グレインバウンダリは分域壁の移動を妨げる要因として作用していることがわかった。 5.エピタキシャル単結晶PZT薄膜の作製の予備実験として,原子層ステップを有するSrTiO_3(100)単結晶基板上でのSrRuO_3電極及びPZT薄膜の成長過程の観察を行った。その結果,基板最表面の原子配列により,その成長様式が層状もしくは島状成長となることがわかった。
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