研究概要 |
安くて高効率で且つSeのような有害物質が含まれない太陽電池開発を目的に、資源が豊富で環境に優しい直接遷移型半導体β-FeSi_2の高品質連続膜の作製を試みた。 今年度は2つの方法を試みた。1つはFeとSiの比を1:2にするために、Feを0.5nm、Siを1.6nm交互に40層蒸着し、凝集を防ぐためにSiO2膜をその上に蒸着し、900℃、14時間のアニールを行った。その結果以下のようなことが判った。イ)Si/Fe比が1.85以下の場合(Siが不足する場合)p型、1.85以上(Feが不足)の場合、n型、になる。ロ)2つのドナー準位(〜0.7eV,〜0.22eV)、2つのアクセプター準位(〜0.11eV,〜0.19eV)が観測された。ハ)正孔移動度の方が電子移動度より大きい(正孔の有効質量が電子のそれより小さい)。ニ)p型で約12,000cm^2/V.sec、n型で約8,000cm^2/V.sec(いずれも低温での値)という、従来の数倍から1桁近く高い価が得られた。 2つ目は同時蒸着によるβ-FeSi_2連続膜の作製である。FeおよびSiの蒸着速度の制御を改善し、FeとSiの比を1:2になるように同時蒸着を行うことにより、高品質β-FeSi_2連続膜を得ることが出来た。特に、Si基板温度を470℃にして同時蒸着した場合には、凝集することなく、約1μmの厚いβ-FeSi_2連続膜を得ることが出来た。
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