フェムト秒レーザー励起による超伝導薄膜からのテラヘルツ電磁波放射を観測し、その電荷ダイナミックスについて検討した。検討した材料は、YBa_2Cu_3O_<7-δ>、Y_<0.7>Pr_<0.3>Ba_2Cu_3O_<7-δ>、Bi_2SrCa_2Cu_2O_<8+δ>薄膜である。特にBi系については本年度初めて観測に成功した。本研究では、まず、超伝導体に対する新しい光励起電荷ダイナミックス評価法として、ポンプ・プローブテラヘルツ電磁波放射観測法を提案し、そのシステムの構築を行った。そのシステムを用いて、半導体の光励起電荷ダイナミックスを観測し、優れた評価技術であることを示した。次いで、超伝導材料にも適用し、時間分解100フェムト秒での電荷ダイナミックスの観測に成功した。その結果から、フェムト秒光パルス入射後に、雪崩的対粒子破壊により、超伝導電流が減少し、その過程で、カイネティックインダクタンスの増加に伴い、超伝導対粒子の加速により、電流が回復し、その後、再結合により緩和していく過程により超伝導電流の変調が実現していることが示唆された。Bi系については現在実験中であるが、Y系と大きく特性が異なることが見出された。Bi系における電荷変調時間は、Y系に対するよりも10倍程度遅いことが明らかとなった。また、この電流変調原理に基づき、フェムト秒光パルスによる磁束量子の生成・制御を薄膜中で実現し、光パルスの形状を反映した、ボルテックス分布を誘起することに成功した。即ち、この新しい効果がフェムト秒光信号の2次元イメージング応用に展開できることを示した。さらに、超伝導ループ中での磁束量子の光生成制御を行い、ループに組み合わせて作成したSQUIDにより、その生成磁束の検出を試みた。その結果、試作したデバイスが光メモリーとして、動作していることを確認し、新しいデバイス応用への道を切開くことができた。
|