分散マネジメントソリトンを用いた超高速パルス伝送の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12450148
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 多久島 裕一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (10272585)
• キーワード: 光ソリトン / 分散マネージメント / 光ファイバ通信 / 群速度分散 / 分散モニタ / 偏波分散 / 非線形光学効果 / 波長分割多重

研究概要

本年度は、前年度までに得られた設計指針を元に分散マネジメント伝送路を構築し、超短パルス伝送実験を行った。さらに、これらのシステムを実用化する際に問題となる分散監視のための新しい手法を開発することに成功した。以上のように、テラビット級の伝送速度を実現するための指針を得て、研究を総括した。
40Gbit/s分散マネジメントソリトン伝送実験:前年度の設計に基づき、分散マネジメント伝送路を作成し、固有光パルス光源を送信光として用いることにより超短パルスの伝送実験を行った。1000kmを超える伝送実験を行うために、分散マネジメント伝送路の2周期分(全長106km)だけを構築し、これをループ状にして何度も同じファイバを通過させる周回ループ法を採用した。実験においては、分散マネジメントソリトンのパルス間相互作用を系統的に調べ、パルス波形、およびパルス間隔を伝送距離の関数として測定することに成功した。得られた結果は前年度で得られた理論検討と非常によく一致た。また、エネルギーを固定した最適な条件において伝送実験を行い、伝送距離が2000kmを超えてもエラーフリー伝送が実現されること、および伝送距離1060kmにおいて分散耐力180ps/nmが得られた。この分散耐力は、線形伝送システムの分散耐力の倍以上であり、大きな改善を実際の伝送実験で示すとともに、短パルスを用いた長距離伝送システムにおける設計指針を明らかにすることができた。
分散マネジメント伝送路における分散制御および分散監視:実際の伝送路を構築する上では、製造上のばらつき及び運用中の時間変動により設計値から分散値がずれることが考えられる。ビットレートの高いシステムにおいては、分散耐力が小さくなるため、分散監視と制御は実用上重要である。
本年度は、実際に運用中の伝送路の分散値を監視する方法を新たに提案した。この方法は、光源の光周波数をわずかに変調し、分散と光周波数変調によって引き起こされる群遅延時間の揺らぎを受信側でモニタすることにより分散値を測定する技術で、伝送サービスをとめることなく遠端で監視が行えるという優れた利点を持つ。我々は実験によるデモンストレーションを行い、1000kmを超える伝送路のインサービス分散モニタに成功した。

研究成果

• [文献書誌] M.Jablonski, Y.Takushima, K.Kikuchi: "The realization of all-pass filters for third-order dispersion compensation in ultrafast optical fiber transmission systems"IEEE/OSA J. Lightwave Technol.. 19,8. 1194-1205 (2001)
• [文献書誌] N.S. Moon, T.Sakamoto, Y.Takushima, K.Kikuchi: "Experimental verification of Gaussian approximation model of multiple intraband crosstalk in wavelength-division multiplexed networks using recirculating fiber loop"IEEE Photonics Technol. Lett.. 13,9. 1038-1030 (2001)
• [文献書誌] Y.Takushima, K.Kikuchi: "In-service monitor for group-velocity dispersion of optical fiber transmission systems"IEE Electron. Lett.. 37, 12. 734-735 (2001)
• [文献書誌] Y.Takushima, T.Douke, K.Kikuchi: "Influence of polarization-mode dispersion on soliton interaction in dispersion-managed soliton transmission systems"IEE Electron. Lett.. 37, 13. 849-850 (2001)
• [文献書誌] Y.Takushima, T.Douke, X.Wang, K.Kikuchi: "Dispersion tolerance and transmission distance ofa 40 Gbit/s dispersion management soliton transmission system"IEEE/OSA J. Lightwave Technol.. 20,3(掲載予定). (2002)