超大容量基幹ネットワークを実現するための基盤技術は、大容量伝送技術とノードにおける交換技術に大別できる。このうち、伝送に関しては波長分割多重(WDM)伝送技術の確立により大容量化が進められており目覚しい進歩を遂げている。 波長多重伝送の総伝送容量は(1波長当りのビットレート)x(波長数)で表されるが、近年の波長多重伝送における総伝送容量の伸びは主として波長数の増加によって支えられている。しかし、光といえども使用できる帯域は有限であり、波長数の増大は監視・制御等を非常に煩雑化させる。これを解決するには伝送する光パルス間隔を狭くしてビットレートを高くするほかにないが、伝送するパルスの時間幅が短くなるにつれて光ファイバの様々な効果が問題となる。 本研究では、分散マネジメントソリトンと呼ばれる光パルスを用いて、超短パルス伝搬で問題となる分散、非線形光学効果、さらに高次分散等に対して耐力をもつ伝送技術を確立し、1波長当りの究極的な伝送速度の限界を追求することを目的とした。このために、分散マネジメントソリトンの基本的な性質とその設計手法を検討し、これらの検討を基に実際にソリトン光源と伝送路を構築して伝送実験を行った。得られた主な結果は以下のとおりである。(1)数値シミュレーションにより、分散マネジメントソリトンシステムにおける分散耐力、偏波分散の影響、および高次分散の影響を調べ、パルスのエネルギーを制御することにより非常に安定な伝送システムが高いビットレートでも構築できることを示した。(2)これらの知見を元に、40Gbit/s長距離伝送システムを構築し、高いビットレートでの安定な伝送をデモンストレーションした。(3)実用上問題となる分散監視、分散補償に関して新しい方法を提案し、その有効性を実験で確かめた。これらの成果を元に本研究を総括し、おおよそ所期の成果を収めることができた。
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