研究概要 |
本年度は,これまで行ってきたネーミング/ディレクトリサービス機構,セマンティックルーティング機構,自律分散型資源/サービス組織化機構の改良と最終的な評価を行い,テストベッド上への各種アプリケーションの実装を行った. 1.ネーミング/ディレクトリサービス機構 ネーミング/ディレクトリサービス機構については,Peer-to-peerの技術を取り入れ,完全自律分散で名前の管理や解決を高速かつロバストに行えるようにするとともに,複数の名前空間を取り扱えるように,Plug-in技術を適用して,システムのコンポーネント化を進めた.また,名前の管理・解決アルゴリズムについてシミュレーションによりスケーラビリティの評価を行った.この結果,開発したネーミング/ディレクトリサービス機構は,膨大なオブジェクトが存在する状況において好ましい性質を持つことを明らかにした. 2.セマンティツクルーテッング機構 セマンティックルーティング機構については,前記のネーミング/ディレクトリサービスの機能を利用して,地理的位置や機能などをあて先としてパケットを配送できる仕組みを「名前スタック」として実現し,これを実装・評価した.実装したルーティング機構は,抽象的なあて先でパケットを配送する複雑な機能を有するにもかかわらず,ビデオや音声などのストリームも転送できる高い性能を有することを確認した. 3.サービス組織化機構 サービス組織化機構については,サービスを構成する任意の機能を相互に接続できる「機能自動補間機構」および,あるひとつの機能を複数の機能で等価化する「機能自動合成機構」を実現するために,入出力のデータフォーマット情報と,入出力間の関係によって機能を記述する方式を考え,これを前記の名前スタック機能を利用して,ルーティング機構に統合化した. 4.プロトタイプアプリケーションの実装 最後に,これら機構を使った典型的なアプリケーションとして,携帯電話を制御用端末として,位置情報システムやセンサネットワークと連携しながら任意のデバイスで動画や音声情報をやり取りできる遠隔会議システムを実装した.このアプリケーションは前記の機構を利用して動作するために,ユーザの移動や障害に対して透過的な振る舞いができるようになっている.
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