研究概要 |
本課題は,本来「心理学」の概念であるカクテルパーティー効果を,「工学」の分野にもちこみ,生体の機能に近いセンシングシステムを実現することを目標とする.この目的のため,本課題では,「視覚と聴覚の空間座標上での統合に適した分散型視聴覚融合デバイスによるシステム」という手法を提案し,その有効性を,ディジタル信号処理系を実際に試作することで実証する.本年度は,以下の成果を得た. まず第一の成果は,マイクロホンアレイを,大規模アレイに拡張したことである.当初の予定では64本のマイクからなる大規模アレイを試作することが目標であったが,実際には156本の大規模アレイを完成させることができた. このような大規模アレイが実現できた背景として,AD変換された各マイクロホン信号を束ね,音響信号処理用のDSPに導くための専用通信ネットワークモジュールの完成があげられる.実際に製作したモジュールは16chぶんのマイクロホン信号を多重化して隣のモジュールに転送する機構をもつもので,このモジュールの導入によって,大規模アレイを簡単に構成できるようになった. 次に,動画像の前処理のためのDSPの並列処理による実時間システムを設計・製作については,DSPのモジュール数を増強した.また,画像入力,画像出力モジュールとして,標準的に用いることのできる基板を設計・製作し,次年度以降のカメラ数拡張のための準備を終えた.またDSP間の通信機能の強力なDSPを用いて動画像の並列処理に特化したシステムを構築する計画については,現在設計中で,どのような通信方式が適当かをここまでの成果に照らして検討中である.
|