研究概要 |
本研究では,人間の意志を脳波から識別し,マンマシンインターフェースに利用する方法を確立することを目的として,認識や運動に関連した脳波の識別に関する研究を進め,以下の研究成果を得た. (1)視覚性オドボール課題時の応答脳波の波形パタン識別 標的刺激が出現した時だけその回数をカウントするよう被験者に義務づけた選択反応実験において得られた刺激応答脳波の波形識別における,最適な脳波採取部位,サンプリング周波数,周波数的特徴量等に関する検討を行った.最適採取部位に関しては,単極誘導脳波では後頭部が,局所脳波では左右からみた中央部で識別精度が良いこと,また,被験者毎に識別精度の良いサンプリング周波数が異なることを確認した.周波数的特徴量に関しては,被験者毎にその現れる帯域が異なるものの,標的刺激提示時のほうが,非標的刺激提示時より,高い周波数までその成分を持つ傾向があることを確認した. (2)ウェーブレット解析を利用した脳波波形の特徴抽出 脳波特有の周波数成分を考慮に入れた周波数分解能を持つよう修正を加えたガボールウェーブレット変換を利用して特徴抽出を行い,その特徴量を基に,脳波波形パタンならびに20秒毎の睡眠段階のパタン識別を試みた.その結果,脳波波形パタンはもとより,脳波要素波の総合的判読を必要とする睡眠段階のパタン識別もある程度可能であることを確認した. (3)運動に関連した脳波変動の検出 右手・左手をディスプレイからの指示に応じて動かすことを想像することを被験者に義務づけた実験によって得られた脳波2ch(C3,C4)の個人差や実験日間の差違等に関して,推定自己回帰モデルパラメータの分布に着目して検討を行った.その結果,推定パラメータの分布が小さい時間帯において識別精度が向上すること,同一被験者においても,実験を繰り返すことによって応答脳波が変化(安定)することを確認した.
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