研究概要 |
本年度は,入力の有限次元化に基づく学習制御法および,共役システムに基づく学習制御に重点をおいて研究を進め,以下の成果を得た. まず,前者の学習制御法に関して,マニピュレータに代表される非線形機械系を対象として,その設計法を与え,その学習収束性に関して厳密な証明を与えた.そこでは,機械系に固有の性質である受動性を利用している.理想的な場合には,'誤差ゼロでの目標値追従を実現できるが,制御対象のモデルとしては,パラメータが線形に表われる形式であることが重要であり,パラメータの範囲に関しては大きな不確かさを許容する.目標値信号が一定の条件を満足する場合には,学習の過程において,物理パラメータの正確な値が得られることが期待されるが,この点については,今後もより詳細な議論を必要とする. 一方,後者に関しては,メカトロニクス系において目標値追従ばかりでなく,その他のより一般的な評価関数を最適化するのに有効であることが期待される.この点については,シミュレーションによりその有効性を確認できたが,理論的にはまだ十分とはいえず,この点が今後の課題として残された. 実験検証に関しては,マニピュレータを用いた軌道追従学習制御において,上記の両者の手法においてその有効性を確認している.また,より複雑な対象としての移動ロボットに関しては,目標軌道を任意に与えるために,マスターシステムを構築し,システム全体の基本的な動作実験を行うとともに,移動ロボット用の動力伝達要素の小型化を目指した機構設計を行い第二次試作器を作成したにとどまった.
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