研究概要 |
本年度は ・新フィルタによるCD信号の処理とその特性評価 ・サンプルレート変換器の最適設計 ・新方式による通信システム設計 を主な目標とした.まずCD信号の処理においては,ダウンサンプルされたディジタル信号に対して音声復元実験を行い,殆んど音質劣化なく再生可能であることを確認した.さらに原CD信号をそのまま新フィルタで処理することにより,現用のCD再生装置でも音質の向上が図れることを確認した.これはアナログ特性を設計に取り込んだ成果であり,現在のCD規格がまだ可能性を残していることを示している.これをさらにアップサンプルすることによって性能向上が図れる見込みであるが,これは来年以降の課題である. サンプルレート変換器においては,旧来の方法ではアナログ特性の無視によるリンギングが発生することが分かっていたが,変換器が周期時変系となるため設計システムが高次元となり,実用に問題を残していた.しかし変換レートを因数分解し,逐次設計に帰着させることにより実用範囲での計算で設計が可能となった.またWavelet展開への応用も見出され,最適Wavelet展開をサンプル値制御系によって計算できることが明らかとなった. 以上の設計問題において,復元時の信号の遅れをどの程度許容するかという問題がある.遅れを大きくすれば信号復元特性が向上するが,一方設計問題が容易に数百次元となり,現在の標準CADプログラムでは対応できない.これに対し,数値最適化法を用いる方法を開発中である. これらの技術の応用として,ディジタル通信システムにおける送信器,受信器の最適設計問題も,アナログ特性を最適化するべく定式化が可能となり,従来法に比べて性能向上が見込めることが明らかとなった.これを移動通信などの応用に対して実用化するには,本設計パラダイムを適応化する必要があるがこれは次年度以降の課題である.
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