研究概要 |
本研究は,動特性の異なる複数の構造要素を有する構造物の減衰性能を,構造要素間の連成性に着目してエネルギー的に評価する方法論を確立することを目的とした.最終年度は,種々の構造物について数値解析を行い,構造システム挙動における各構造要素のエネルギー分布を検討して減衰性能との関連性を明確にすると同時に,減衰要因を考慮した減衰マトリクス評価法についても研究を進めた. 1.斜張橋システムのケーブル振動連成と減衰性能の解明:多々羅大橋を対象に,ERA (Eigensystem Realization Algorithm)に基づく実験モード解析,有限要素法に基づく理論モード解析,および部分構造法に基づく減衰解析を行って,長大斜張橋システムの連成振動特性と振動減衰性能との関連を解明した. 2.合成2主桁橋の減衰性能の解明:高橋脚を有する2主桁3径間連続合成桁橋の減衰性能につき,振動実験データにERAを適用して高精度同定を行った後,エネルギー的に評価した減衰と比較することで減衰評価法の妥当性を確認した.また,同スパンの合成2主桁橋,4主桁橋を試設計した上でエネルギー的減衰評価を行い,コンクリート床版,鋼主桁,鋼補剛材といった構造要素のモード減衰に占める割合を算出・比較して,合成桁構造と減衰性能との関係など減衰メカニズムを明らかにした. 3.中層建物の常時微動計測と減衰性能の検討:埼玉大学建設工学科1号棟の改修工事に伴い常時微動計測を行って,各構造状態でのモード減衰を同定して構造状態との関係を考察した.特に,上部工と地盤を含めた下部工との相互作用に着目している. 4.減衰要因を考慮した構造物の減衰マトリクス評価の試み:構造要素ごとに内部減衰が異なる場合を想定して,構造物の有限要素モデルに対応した減衰マトリクス,およびそれと等価な複素剛性マトリクスを構築する方法を検討した.
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