研究概要 |
複雑地形上の流れ場を高精度に予測することは日本における風力エネルギーの利用を考える上で極めて重要である.現在風力発電量の予測に広く使われている風況予測モデルは緩やかな地形を対象として提案された線形モデルに基づいて作られている.しかし,線形モデルは地形の傾斜角が大きくなると,平均風速の予測精度が著しく低下し,50%以上の予測誤差を生じることもある. そこで,本研究ではまず3次元非圧縮流体の質量保存式と運動量保存式に基づく非線形モデルを作成した.このモデルは一般曲線座標に基づく有限体積法と非直交コロケート格子を用いることにより任意地形上の流れ場の解析を可能した.数値解法は数値的な振動が発生しない圧力加重補間法に基づくSIMPLE法と共役勾配法に基づくCGSTAB法を用いることにより非線形連立方程式の解を高速に求めることを可能した.また大気乱流を高精度に予測するために乱流特性量であるk,εに関するモデルを改良することにより,剥離を伴う流れの再現に成功した.次に実際の複雑地形を模型化し,大型風洞内に設置することにより実地形における複雑な風況の再現を行った.そして高精度の熱線風速計を用いて7地点において8風向の風速測定を行い,更にこれらの測定結果に基づき,複雑地形を4種類に分類した.すなわち,(1)大きな乱れと流れの剥離が見られる崖地形,(2)風速と乱れの鉛直分布が風向によらずほぼ一定となる丘陵地帯,(3)複雑に入り組んだ谷により大きな増速と大きな乱れが観測される扇状地形,と(4)ほとんどの風向において風速の減少と乱れの増大が見られる窪地形である.これらの風速データは複雑地形における風況特性を理解するには不可欠であり,また13年度に実施される新しい局地風況予測モデルの検証に用いる予定である.
|