研究概要 |
気候変動枠組条約に基づく京都議定書が発効する見込みであり,日本は二酸化炭素排出量の大幅な削減が求められる.そのために二酸化炭素を排出しないエネルギーである風力エネルギーの有効利用が今後重要となる.日本での風力エネルギーの有効利用のためには急峻で複雑な地形上の高精度な風況予測が必要不可欠である. 本研究は流体力学の基礎方程式に基づく新しい局地風況予測モデルを開発し,剥離を伴う複雑地形上の流れ場の高精度な予測を可能にした。また連綿と連なる実地形上の流れを解析するため,流量が保存する境界処理手法を提案した。これにより従来の境界処理による風速の過大または過小評価問題を解決し,実地形の全ての部分を用いて計算した速度場と一部を取り出して計算した速度場はほぼ一致する結果を得た.上流の境界では対象領域と同じ程度の大きさの解析領域を設置することを提案し,上流の地形の影響を正しく反映させる上流境界処理方法を実現した.更に,本局地風況予測モデルを実務に使用できるように,数値解法の高速化を行い,短時間かつ安定に計算を収束させることのできる修正残差切除法を提案した。従来の数値解法に比べ,計算速度を20倍以上に高めた.最後に,実地形模型を用いた大型風洞実験を実施し,複雑地形上における流れ場の特性を局地風況予測モデルより明らかにした.その結果,今回開発した局地風況予測モデルは地形の収束による風速の増大や流れの剥離による風速の減少を的確に予測でき,また予測誤差が10%程度であることを明らかにした. 本研究で開発された局地風況モデルは風力発電量予測の実務にも利用できるものであり,今後の日本エネルギー利用の効率化に大きく貢献する.
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