研究概要 |
(1)サンゴ礁物理・生態環境システムに関する総合的現地観測:2000年6月から9月にかけて,サンゴ礁内外での係留ブイ等による多点同時観測により,海水流動・波浪・水温・塩分・濁度等の長期連続観測を石垣島白保海域を対象として行った.これらの観測結果の解析により,サンゴ礁内海水流動の基本的な力学過程,河川水や外洋水の流入・流出過程,濁質の輸送・巻上げ過程等に関する知見を得た.また,2001年7月には,同海域で前年度と同様のブイ係留システムによる多点同時観測に加えて,多数のGPS搭載型漂流ブイによってサンゴ礁内外における海水流動のラグランジュ観測を行った.その結果,サンゴ礁内の海水流動が,クチや浅瀬リーフェッジといった特徴的な地形構造の空間的な非一様性によって基本的に支配されることが明らかになった. (2)サンゴ群体スケール物理・生態環境観測:サンゴにとっての直接的な環境特性を把握するために,サンゴ群体スケールでの観測を,やはり石垣島白保海域で2001年7月に行った,その結果,サンゴ群体周りの特徴的な水温,海水流動等の特性が明らかになるとともに,サンゴが砂地に比べて良好な光の吸収体になっていることが示された. (3)陸域からの表層土壌流出ならびに栄養塩負荷量の観測と定量的評価モデル開発:陸域からの濁質流出の長期連続計測を轟川流域内の3地点で2000年6月以降継続して行った.一方,流域内の降雨・植生・土壌分類・地形情報等と地表面過程のモデル化に基づいて,サンゴ礁海域への濁質流出量の定量的評価モデルを開発し,上記の実測値との良好な一致が得られた. (4)マングローブ・藻場観測:サンゴ礁の周辺生態系として重要となるマングローブや藻場の物理環境を明らかにするために,石垣島吹通川河口域および宮良川河口域での現地観測を2001年7-8月に実施し,その基本特性を明らかにした. (5)短波海洋レーダおよび係留ブイによる広域海水流動観測ならびにサンゴ幼生広域輸送に関する観測:1998年夏期の大規模白化現象によって打撃を受けた沖縄本島西海岸のサンゴ再生に対して,本島西方の慶良間列島がサンゴ幼生供給源になっていることを実証するべく,新たに開発したGPS搭載型小型漂流ブイによる幼生追跡や短波海洋レーダによる広域表層海水流動観測等を行うことによって,本島に向かう海水流動の存在と幼生の輸送経路および時間を明らかにした.また,室内実験によってサンゴ幼生の探索・定着行動特性を明らかにし,それが上記の慶良間列島から本島への輸送日数とほぼ整合することを示した. (6)数値シミュレーションモデルの開発:以上の現地観測の成果に基づいて,サンゴ礁内の物質(濁質・栄養塩等)や熱量の輸送を支配する海水流動モデル,ならびに,外洋の広域海水流動モデルを,それぞれ,灘岡らが開発してきているSDS-Q3Dモデル(浅水乱流LESモデル)やPOM-dual sigma座標系モデルをベースとして開発した. (7)リモートセンシングによるサンゴ礁モニタリング画像解析手法の開発:サンゴ礁内における海底被覆状態,水深,濁度,サンゴ種などを合理的にマッピングするために,そのベースとなるサンゴ・キャノピーの三次元光学モデルを開発した.
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