研究概要 |
21世紀は地球環境問題が最重要課題であり,たとえば地球温暖化の原因である炭酸ガスの循環機構を科学的に解明し,大気大循環モデル(GCM)を高精度化して地球温暖化をより的確に予測する必要がある.この素過程として,水・空気界面を通しての炭酸ガスの交換現象(気体吸収率など)を解明することが不可欠である.一方,河川内部(一般的には各種水域環境)における生態系・水生生物の保全といった身近な環境面でも,河川における水と空気(酸素)との間で行われるガス交換のメカニズムの解明が叫ばれている.このような炭酸ガスや酸素の水面におけるガス交換現象(気体吸収率)の主因は,水面近傍の乱流構造,特に組織渦によるものと考えられ,これらの現象や相互関連作用を総合的に解明することが不可欠である. 本年度の研究は,閉鎖性水域に風波を発生させ,空気・水の界面現象とその気体輸送特性を乱流統計理論・組織乱流理論に基づいて,高精度レーザー流速計を駆使して実験的に解明したものである.すなわち,2成分レーザー流速計と超音波波高計の同時計測によって,空気側と水側の平均流速分布や乱れ特性分布を解明した.また,4象限区分しきい値法を用いて,組織構造を検討した.得られた主な成果は以下のようである. (1)水面に波が発生した際の水側の乱れ強度は,風波のパラメータである水面変動強度と風波の卓越周波数を用いて無次元化すれば,ほぼ普遍表示できる. (2)上記の特性が成立する深さは平均主流速によらずに,有義波高の3-7倍で,この領域の乱れ強度比はほぼ1.0であり,乱れの等方性指向が確認された. (3)バースト周期と瞬間レイノルズ応力の変動とは強い相関がある.この周期は風波のピーク周波数と一意の関係があることは見出された.また,気体輸送係数を支配することが示唆された.
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