研究概要 |
昨年度の研究は,閉鎖性水域に風波を発生させ,空気・水の界面現象とその気体輸送特性を乱流統計理論・組織乱流理論に基づいて,高精度レーザー流速計を駆使して実験的に解明した.本年度は,風波と開水路乱流が共存したより一般性のある水・空気2層流を対象にして,レーザー流速計とPIVおよび超音波波高計を駆使して,水・空気層の流体運動や渦構造を計測し,その瞬間構造や平均流構造を解明した.また,溶存酸素濃度計(DOメーター)を用いて水層での酸素濃度を計測し,乱流構造と気体輸送との関連性に関する実験的な検討を行った.得られた主要な知見は以下のようである. 1)界面近傍の水層乱流構造は,底面シアーが卓越した開水路流においては乱れが減少し,ほぼ"弱い壁"として解釈できる.しかし,風による界面シアーが卓越してくると,乱れ構造は開水路のものと著しく異なり,特に鉛直方向乱れは急増する.また,通常のレイノルズ分解によつて算定された水層レイノルズ応力は流速変動の波動成分によって負値を有することがわかった.一方,界面近傍の空気層に関しては,水層ほど,また鉛直方向ほど明確な卓越周波数を有した流下方向流速変動スペクトルが得られず,空気層は波状固定床上の水流の構造と相似であることが示唆される. 2)界面シアーが卓越する条件でかつ風波が発生している条件では,開水路流れ共存しても,風波が発達した条件下である2次元波などに関する既往の乱れ構造に対する知見がほぼ適用できる.一方,界面変動は水流と空気流の相対速度に依存して変化する. 3)混成場における気体輸送過程は,底面/界面シアーの比によりほぼ解釈できる.一方,混成場における気体輸送過程を界面近傍乱れ構造から評価するためには,界面での複雑な乱れ構造をどちらのシアーによるものか厳密に考察しなければならず,次年度の課題としたい.
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