研究概要 |
本研究は,移動体通信を援用して精度の高い交通行動データを収集するための新しい交通調査システムの開発を目的とする.今年度の具体的な研究目的は以下の2点である.(1)移動体通信システムの位置特定機能を用いた行動データ収集法の開発と誤差分析.PHSの位置特定サービスを利用して位置データを収集するとともに,周辺条件,移動速度,交通手段などが観測誤差に及ぼす影響を分析する.(2)位置特定データから行動データへの変換アルゴリズムの開発.移動体通信による連続した位置特定データから,トリップデータに変換するためのアルゴリズムを開発する.移動点と滞在点の識別,手段と経路の特定が主要な検討項目となる. 以下のことを具体的に行った. (1)既存研究・手法の体系的整理:GPS,携帯電話,PHSなどの移動体通信技術による位置特定技術の現状,および移動体通信システムを用いた交通調査事例(交通行動に限定しない)について,わが国および諸外国の事例を収集するとともに,それらを体系的に整理した.あわせて,交通行動分析の立場から,行動データの収集に関する問題点を明らかにするために,文献・資料を収集して体系的に整理した.オーストラリアで開催された国際交通行動学会(IATBR)に出席し,行動データの収集とモデリングに関する最新の動向を調査するとともに,Prof.Taylorらから研究のレビューを受けた. (2)パイロット調査の実施と誤差分析:移動体通信システムの位置特定機能を用いた行動データ収集法を開発するための基礎的データを得ることを目的とした少数サンプルのパイロット調査を実施する.位置データの真値を取るために,被験者として学生アルバイトを雇用し,都市内の様々な場所で活動した際のデータを取得した.PHSの位置特定サービスを利用して位置データを収集するとともに,周辺条件,移動速度,交通手段などが観測誤差に及ぼす影響を統計的に分析した.
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